鳴門市における洋上風力発電のゾーニング(適地評価)結果について

1.策定背景

低炭素社会の創出に貢献し、かつ自立分散型で災害にも強い再生可能エネルギーの利用を飛躍的に拡大することが求められています。また、再生可能エネルギーは自然の恵みであり、地域自身がその活用に取り組むことは、地域の経済と活性化に関わる重要な課題です。一方、再生可能エネルギーとして期待されている風力発電等の立地に当たっては、従来、事業者が単独で計画を立案して進めてきましたが、風力発電(特に陸上風力)は立地適地をめぐって事業計画の集中が見られる等、環境面では累積的影響の考慮の必要性などが指摘されています。他方で、地域において環境面だけではなく経済面、社会面も統合的に評価して再生可能エネルギーの導入が可能なエリア、環境保全を優先するエリアの設定を行うゾーニングの手法が注目されてきており、諸外国をはじめ国内でも導入を進める地方公共団体が現れ始めています。

 

そこで、環境省は、地方公共団体が風力発電等の再生可能エネルギーの推進と環境が調和したゾーニングを円滑に行うことを目的として、風力発電等のゾーニングに係る公募モデル事業を実施し、得られた情報や経験を踏まえて平成30年3月に地方公共団体向けの「ゾーニングマニュアル」を策定しました。

 

鳴門市は、平成26年度より鳴門市の自然環境や社会環境と調和し、地域振興にも寄与する再生可能エネルギーの導入を図るため、市域全域を対象に風力発電事業のゾーニングに取り組み、これまで、主に陸上部において風力発電事業のゾーニングを進めてきました。しかし、陸上部では地形や土地の利用状況、集落からの距離、資材搬入道路の建設などの課題が多く、鳴門市内において風力発電の適地を広範囲に抽出するのは難しい状況であります。

 

このため、風力発電等に係るゾーニング導入可能性検討モデル事業の一環として、自然公園区域外である鳴門市の東部海域をモデル地区として、洋上風力発電事業に係るゾーニングを行い(以下「ゾーニングモデル事業」という)、以下図1にその評価結果を公表します。

 

図1 ゾーニング(適地評価)の結果

 

2.検討主体・期間

検討主体

鳴門市が中心となり、共同提案者である「一般社団法人・徳島地域エネルギー」、「自然電力株式会社」がそれぞれの立場で連携しながら本ゾーニングモデル事業を実施してきました。

 

  • 鳴門市:事業の進行管理、関係機関との連絡調整や許認可に関する事項、地域住民や自然保護団体等との合意形成
  • 徳島地域エネルギー:海外を含む先進事例の紹介、事業者や有識者との連絡調整
  • 自然電力株式会社:風況等調査の実施及び分析、事業推進の支援

 

図2 業務の実施体制

 

検討期間

平成28(2016)年10月7日 ~ 平成30(2018)年3月30日

 

3.調査範囲

本ゾーニングモデル事業の調査範囲(モデル地区)は徳島県鳴門市の東側に位置する海域となり、図3に示すとおりです。本モデル地区は、紀伊水道の北西部に位置しており、徳島県鳴門市、淡路島南部に近接する面積約55km2の海域です。モデル地区内の水深は0m~約30mで、遠浅な海底地形が広がる海域です。

 

モデル地区における東側の境界は、徳島県が示す漁業操業エリアの兵庫県との境界です。また、南側の境界は鳴門市と松茂町との境界を示しており、都市計画図面において旧吉野川河口部にある境界線を沖合に延長することで海上の境界線を設定しました。ただし、境界設定が不確定なため保守的に境界を設定しました。

 

鳴門市の北側(播磨灘)から鳴門海峡の海域は瀬戸内海国立公園に指定されており(図4)、現状では洋上風力発電の導入海域として検討するのはハードルが高いと考えられることから、モデル地区の北側境界は瀬戸内海国立公園の境界とし、モデル地区からは国立公園は除外しました。

 

図3 モデル地区の位置

図4 鳴門市周辺の国立公園

 

4.ゾーニングマップの作成(レイヤーの重ね合わせ)

1.ゾーニングマップの作成手順

図5に、本事業でゾーニングを進めるにあたって実施した概略フローを示します。

 

はじめに、法規制等、社会面、環境面等に係る必要情報を収集し、洋上風力発電の導入にあたって制約になりうる項目を整理しマップ化します。既存資料等のみでは不十分な場合、現地調査やヒアリング調査を実施して追加的に情報を収集します。さらに、整理された制約項目を、重大性や調整の困難性等を考慮してレッドゾーンからホワイトゾーンの4段階で分類し、これらを重ね合わせることでモデル地区内の総合評価を行います(図6)。

 

次に、制約が相対的に少ないエリアを仮適地として抽出し、その仮適地における経済性評価および景観評価を行い、その評価結果を踏まえて必要に応じた再検討を実施します。

 

図5 本事業におけるゾーニングの概略フロー

図6 ゾーニング(適地評価)のイメージ

 

2.エリアの種類

モデル地区における洋上風力発電のゾーニングを進めるにあたって、制約の重みづけをレッドゾーン~ホワイトゾーンの4段階にて整理しました(表1)。制約によって「洋上風力事業の実施が不適」と判断される海域については、1つの制約でも該当した時点でレッドゾーンと扱うことにしました。一方、各制約によって「より慎重な調整が必要」「調整が必要」と判断される海域については、それぞれオレンジゾーン(2pt.)イエローゾーン(1pt.)とし、全制約における累積点(pt.)に応じて制約の大きさを評価することにしました。つまり、レッドゾーン以外のゾーニング対象海域では、累積点(pt.)が大きいほど制約が多い(大きい)と判断することができます。

 

表1 制約条件の重みづけ

 

3.主なエリアの設定(レイヤーの作成)

3.1 法規制等

モデル地区において制約と判断された法規制等に係る制約条件(表2)を1つのマップ上に重ねて図7のようにエリアを整理しました。

 

レッドゾーンとして、航空法に係る徳島飛行場の水平表面および進入表面を指定しました。また、港湾法に係る緊急確保航路および電波法に係る伝搬障害防止区域に指定される海域についてもレッドゾーンとしました。これらの海域については、法規制面から洋上風車の設置が困難と判断されるエリアで、モデル地区の南西および北東部が該当します。

 

次にオレンジゾーンとして、徳島飛行場における航空交通管制圏内の海域が該当します。同様に、徳島飛行場を管理する海上自衛隊が主張する航空管制等の規制に関する意見に該当する海域についても、慎重な調整が必要と判断されるためオレンジゾーンと指定しました。

 

モデル地区の西側に位置する沿岸部については、海岸保全区域に該当するためイエローゾーンに指定ました。また、鳴門海峡を抜ける大型船の通航航路についても、船舶通航量が多い海域(150隻/月~)としてイエローゾーンに整理しました。

 

 

表2 ゾーニングにおいて考慮した制約条件(法規制等)
No 根拠法令 指定状況 制約の整理
1 航空法 徳島飛行場が近くに位置しており、モデル地区の一部に制限表面のうちの水平表面、進入表面が設定されている 徳島飛行場の中心点から3500m圏内(=水平表面)、付随する進入表面をレッドゾーンに指定。航空交通管制圏はオレンジゾーンに指定
1 - 徳島飛行場を管理する海上自衛隊からの航空管制等の規制に関する意見(下記3事項)
  • 周回進入区域(楕円)
  • 進入経路保護空域等
  • 訓練等有視界飛行経路
ヒアリングによって得られた情報に基づき、該当海域をオレンジゾーンに指定
2 港湾法 モデル地区内の一部が緊急確保航路に指定されている 緊急確保航路に指定されている海域をレッドゾーンに指定。また、船舶通航量が多い海域※1(150隻/月~)はイエローゾーンに指定
3 電波法 モデル地区を分断するようにして、伝搬障害防止区域が指定されている 伝搬障害防止区域に指定されている海域をレッドゾーンに指定
4 海岸法 モデル地区内の海岸部が海岸保全区域に指定されている 海岸保全区域に指定されている海域をイエローゾーンに指定
5 漁業法 モデル地区内の西側沿岸域に漁業権が設定されている 社会的制約としてとりまとめ、利用状況に応じて各エリアに指定(表3参照)

※1 海上保安庁 海洋台帳より(2012年10月データをベースとした)

 

図7 法規制等の制約状況

 

3.2社会的制約

3.2.1漁業

モデル地区において漁業に係る制約条件(表3)を1つのマップ上に重ねて図8のようにエリアを整理しました。漁業の種類は、モデル地区で操業されている許可漁業と漁業権漁業を対象し、これらの操業状況や許可件数を鑑みてレッドゾーンからイエローゾーンに分類しました。

 

モデル地区における知事許可漁業は、計2種類(瀬戸内海機船船引き網、小型機船底引き網)が行われています。許可件数が多く、調整の困難性が高いと考えられる海域(瀬戸内海機船船引き網D、小型機船底引き網b)をオレンジゾーンとし、許可件数が少ない海域(瀬戸内海機船船引き網A、小型機船底引き網a)をイエローゾーンと指定しました。

 

モデル地区の西側に位置する漁業権エリアでは、ワカメの養殖等の漁業がほぼ全域において操業されており、現状での調整は困難と考えられるため全ての漁業権エリアをレッドゾーンと指定しました。

 

モデル地区は兵庫県と徳島県に挟まれる海域に位置しており、モデル地区内にそれぞれの県が主張する漁業操業エリアが重複している海域が存在します。このように2つの県にまたがる海域の場合、調整すべきステークホルダーが非常に多くことが想定されるためオレンジゾーンに指定しました。

 

 

表3 ゾーニングにおいて考慮した制約条件(漁業)
  レッドゾーン オレンジゾーン イエローゾーン 備考
大臣許可漁業 - - - 制約の該当なし※
知事許可漁業 -
  • 瀬戸内海機船船引き網Dエリア
  • 小型機船底引き網bエリア
  • 瀬戸内海機船
    船引き網Aエリア
  • 小型機船底引き網aエリア

①ステークホルダー数
(許可件数:漁協別)

②利用状況
漁業者へのヒアリングを踏まえて、モデルエリア内の利用状況を付属情報としてとりまとめる

漁業権漁業 区画 重点的利用エリア - - 全エリアをレッドゾーン
共同 重点的利用エリア - - 全エリアをレッドゾーン
定置 - - - 該当なし
漁業操業エリア - 兵庫県が主張する漁業操業エリア - 一部該当あり

※徳島県内で許可されている大臣許可漁業は以下の通りだが、操業区域は沿岸域ではなく沖合いの漁場となる。

  • 沖合底引き網 2件
  • 近海かつおまぐろ 7件

 

図8 漁業の制約状況

 

3.2.2騒音

モデル地区において騒音に係る制約条件(表4)をマップ上に整理しました(図9)。モデル地区で境界部に接する沿岸は西側の里浦海岸であり、その海岸線で適切な騒音レベルとなるように風車設置地点の離岸距離を設定しました。

 

騒音レベルの閾値については、レッドゾーンには騒音に係る環境基準(A類型(住居);LAeq=45dB)、イエローゾーンには環境省「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」(残留騒音+5dB)を採用し、海岸線においてこれらの閾値を超過すると予測された風車設置エリアを騒音の制約を有すると判断しました。予測結果で示したようにレッドゾーンは海岸線から670m圏内、イエローゾーンは海岸線から1,000m圏内です。

 

表4 ゾーニングにおいて考慮した制約条件(騒音)

図9 騒音の制約状況

 

3.2.3景観

モデル地区において景観に係る制約条件をマップ上に整理しました(図10)。

 

陸上から洋上風車が最も大きく見える場所として、騒音の前提条件と同様に里浦海岸の海岸線を基準とし、視野内の風車高さ(垂直見込角)から景観上の適切と考えられる離隔距離を算出しました。垂直見込角の閾値は鉄塔の見え方を参照し、圧迫感を受けるようになる「垂直見込角>10度」のエリアをレッドゾーン、圧迫感は受けないものの比較的細部が見えるようになる「垂直見込角>3度」をイエローゾーンとして設定しました。

 

図10で示されるようにレッドゾーンは海岸線から810m圏内、イエローゾーンは海岸線から2,680m圏内です。

 

図10  景観の制約状況

 

3.3自然環境的制約

モデル地区において制約と判断された自然環境面の項目は、下記に示される鳥類と藻場です。

 

3.3.1鳥類

モデル地区における鳥類に係る制約条件は高密度飛翔エリアと猛禽類渡りのルートについて着目し、鳥類の要注意エリアを抽出しました。

 

高密度飛翔エリアは、現地調査(春季3日間、秋季3日間)のデータを基に、対象種の約9割が確認された地点を整理し、離岸距離を用いて算出しました。また、猛禽類渡りについては高度と幅が重要になると考え、渡りの主要ルートを仮定し作成した猛禽類渡りの幅を基に、現地調査結果を用いて検証を行いました。

 

図11に示す通り、対象種の9割が確認された高密度飛翔エリア(海岸線から1.3km圏内)および、現地調査に基づき検証された猛禽類渡りの幅(主要な渡りルートに対して5.5km幅)に含まれるエリアをそれぞれイエローゾーンとして設定しました。

 

図11 鳥類の制約状況

 

3.3.2藻場

海中の生態系を構築する場として、藻場は大きな役割を果たしていることが知られています。特にモデル地区の一部は「生物多様性の観点から重要度の高い海域(沿岸域)」に属しており、当該海域の特徴として藻場に関連する記述があることからも、モデル地区において藻場を十分に配慮する必要があります。

 

よって洋上風力発電施設の建設・運転は生態系に大きく影響を及ぼす可能性があるため、該当海域における開発は不可と判断し、モデル地区における藻場は全てレッドゾーンと設定しました。図12で示されるように、レッドゾーンとして整理した藻場は、里浦海岸から1km圏内に点在しています。

 

図12 藻場の分布状況

 

5.ゾーニングの評価結果

表5にゾーニングに考慮した全ての制約条件を示します。法規制等では徳島飛行場に係る制約や緊急確保航路などが該当し、それぞれレッドゾーンないしオレンジゾーンとして整理しました。

 

社会面として漁業による制約を考慮する必要があり、モデル地区周辺はワカメの養殖等を盛んに行っているため、実操業エリアである漁業権エリアは全てレッドゾーンに整理しました。一方、知事許可漁業エリアについては、許可件数をステークホルダーの数とみなし、エリア毎に与えられた許可件数に応じて制約の重みづけを行いました。また、騒音および景観については、風車の設置地点が沖合であるほど陸域(住居)への影響が小さいため、海岸線を基準として離岸距離毎に制約条件を整理しました。

 

環境面としては、モデル地区が渡り鳥の主要ルート付近に位置していることから、本事業内で実施した鳥類調査結果を参照して、リスクが高いと考えられる海域をイエローゾーンとして整理しました。また、藻場に該当する海域はレッドゾーンとしました。

 

表5 ゾーニングに用いた制約条件

 

本ゾーニング事業で考慮する各制約について、レイヤーとして重ね合わせ合わせたマップを図13に示します。

 

各制約条件のレイヤーを重ね合わせて、相対的に低い点数の(=制約が小さい)海域としてAからFの6エリアが抽出されました。BからDの3エリアは同点数(計7pt.)であるが、Cは漁業による制約、Dは徳島飛行場による制約が相対的に大きく、調整する困難性がより高いと考えました。また、E(6pt.)およびF(7pt.)は、徳島県と兵庫県で重複する漁業操業区域に属しており、関連するステークホルダーが非常に多いことが想定されます。そのため、A(計6pt.)および景観による制約を伴うB(計7pt.)を含めた2エリアを仮適地①および②として抽出しました(図14)。

 

さらに、これらの仮適地①および②を対象として経済性評価と景観による影響評価を実施しました。経済性と景観のいずれについても課題はあるものの、大きな制約であるとは認められず、本ゾーニング事業においてはこれらの2エリアを「条件付きの適地」として抽出しました。

 

図13 全制約の重ね合わせ結果

図14 抽出された条件付き適地

 

表6に適地①および②が該当する制約条件を示します。この中で徳島飛行場に係る制約が最も大きいと考えられ、いずれの適地にも該当する制約条件です。また、両適地は漁業権海域や港湾エリアに属しておらず、一般海域内における知事許可漁業の操業エリアに該当します。周辺海域を含む知事許可漁業エリアの中ではステークホルダー数が少なく相対的に制約が小さいものの、現状ではルールが未整備である一般海域内において漁業関係者との調整が必要となります。

 

一方、事業性についても課題は残されています。外部的要因に影響されるものであるが、現状の日本国内で想定される洋上風車導入に係る資本費や運転維持費では、十分な事業性を確保することが難しいと考えられ、洋上風力の普及に伴って期待される低コスト化が求められます。

 

 

表6 適地における制約条件
  該当する制約条件 概要
適地① 飛行場に係る制約(計4pt.) いずれも法規制には該当するものではないが、徳島飛行場の関係機関は、空港の安全管理上の理由から洋上風力発電所の建設に難色を示している。また、適地①は徳島飛行場の航空交通管制圏内に位置している。
漁業(計2pt.) 周辺漁協との調整を含めた漁業に関する合意形成が必要となる。適地①は2種類の許可漁業の範囲となるため、関係者との調整が必要となると考えられるが、いずれも相対的には許可件数が少ない海域である。
適地② 飛行場に係る制約(計4pt.) 適地①と同様である。
漁業(計2pt.) 適地①と同様である。
景観(1pt.) 適地①と比較すると、エリアの一部が里浦海岸から近くに位置し、さらに風車基数が多くなるため、景観による影響が大きくなると考えられる。一部の風車は、本事業で設定した景観のイエローゾーン(離隔距離:2,680m圏内)内になるため、景観への影響について留意が必要と考えられる。

 

6.ゾーニング事業における課題等

今後、日本国内における洋上風力発電導入を検討するにあたり、導入エリアを事前に抽出することは適切な海域利用の面から重要です。そのため、現状における課題等について整理し、より効率的かつ信頼性が高いゾーニングが実施できるようにすることが求められます。

 

最後に本ゾーニング事業を通じて浮かび上がった、洋上風力発電を対象としたゾーニングにおける課題や検討事項については次のとおりです。

 

大項目 小項目 概要 備考
法規制等 自然公園 国立・国定公園における利用可能性 洋上風力発電のみならず国立・国定公園およびその周辺地域には再生可能エネルギーの多くのポテンシャルが期待される。「国立・国定公園であれば現実的に設置が難しい」という判断ではなく、個別事例に応じた利用可能性を広げる議論が必要である。
境界の明確化 自然公園の境界が明確でなく、そのため境界付近における管理者が不特定多数となりうる。
一般海域 開発に係るルールの整備 一般海域の管理者や開発ルールが明確でないため、膨大なステークホルダーと調整する必要がある。今後整備されると考えられる洋上風力発電に係る海域利用ルールの整備が期待される。
海域における境界 境界の定義が明確でない 自治体間、漁業操業エリア等の海域における境界が明確でなく、複数に該当して重なり合うエリアではステークホルダーが多くなり、調整が難しくなることが考えられる。また、風車設置後に発生する固定資産税についても、分配が不明確となる。(Ex. 徳島県と兵庫県両者が主張する漁業操業エリア)
空港・自衛隊基地 周辺海域利用のルール 法的に明示されている制限表面等のエリアとは異なり、空港周辺には訓練等有視界飛行経路等を理由にして、自衛隊等が主張する制限エリアが別途存在する場合がある。主に安全性の確保が理由であるが、エリアの基準や調整ルール等の明確化が望まれる。
社会面 漁業 許可漁業エリアの面的整理 漁業権エリアとは異なりデータ整備がなされていないため、一般海域に属する知事許可漁業については、対象海域の面的整理や許可状況に関する情報収集が簡単に行えない。そのため、対象海域におけるステークホルダーの特定が難しい。
  慣習的な取り決め 漁業エリアは慣習的な取り決め(漁協間の協定等)によって実操業されており、許可エリア等とは異なる可能性があるため漁業操業エリアの境界を正確に把握できない。そのため、無数のステークホルダーが対象海域の権利を主張する可能性がある。
騒音 理解促進 風車音は音質的、周期性の特徴を指摘されることがあるため、環境基準等と比較した理論上の騒音レベルのみではなく、合意形成を目的とするために風車による騒音を体感できる方法が必要と考えられる。特に低周波音・超低周波音については、慎重な情報を基に風車自体をストレスと感じてしまうケースがあり、慎重な理解と議論が求められる。
景観 生活環境からの検討 景勝地からの景観のみではなく、合意形成の面から周辺集落など地域住民の生活環境からの景観の検討についても求められる可能性がある。海岸線より内陸側に移動すると洋上風車が見えないケースも多く、集落内の建屋や樹木等を含めた可視・不可視の検討を行うと、地域住民がイメージを掴みやすいと考えられる。
リアルな表現手法 洋上には風車以外に大きさを比較できるものがなく、フォトモンタージュでは風車の大きさをイメージすることが難しい。撮影地点周辺の樹木等と大きさの比較ができるため、3D VR等の技術を用いることでリアルな表現で景観を再現でき、有効なツールの一つと考えられる。
洋上ウィンドファームを対象とした評価手法 本ゾーニング事業では、風車における縦方向の大きさ(=垂直見込角)を基準として景観による影響を評価した。一方で、洋上ではウィンドファームの水平幅や複数列配置による見え方についても景観の評価ポイントになりえ、今後の評価ポイントとして議論する必要があると考えられる。
ポジティブな景観 景観に関する影響を考えるとき、現状では風車をいかに見えないようにするかという議論が中心である。一方で、配置デザイン、アート、建築デザインなどをキーワードとすることで「見えない風車」から「魅せる風車」に移行することができ、景観面から観光資源として寄与することが期待できる。
環境面 鳥類 ゾーニング段階における鳥類調査手法 本ゾーニング事業では目視による鳥類調査を行った。レーダー調査と比較すると、離岸距離別・高度別・種別に観察することができ、現場状況(Ex. 養殖施設、船舶等)に応じた集計が可能というメリットが目視調査にある。一方で、離岸距離が離れると見落とし率が高くなり、夜間には観察が行えないデメリットもあるため、対象海域の環境条件や対象鳥種を事前に把握し、適切な調査手法を選択する必要がある。
鳥類調査結果のデータベース化 ゾーニング段階では対象海域内におけるリスクの大小のみではなく、他地域と比較した際のリスクの大きさについて把握する必要がある。洋上における鳥類調査結果で、現状で公表されている観測結果は限られているため、別地域の事例と比較してリスクを検討することが現状では難しい。鳥類調査結果のデータベース化は、全国的に見たときの鳥類リスクを判断するために有用と考えられる。
鳥類が飛翔する気象条件 主に渡り鳥が飛翔する気象条件は晴天ないし曇天で、無風ないし強風条件ではないと言われている。一方で、風車はカットイン3~4m/s程度以上の風速で稼働し、12~14m/s程度の強風時に定格発電状態に達する。このように各々が適合する気象条件は多くなく、「渡りの期間に風車を停止」(=順応的な管理)することが合意形成の一助になる可能性がある。今後、「渡り鳥の観測情報」と「気象観測データ」を分析することで、対象海域付近における傾向を定量的に把握することが可能と期待される。
上昇流を用いた適地抽出手法 渡り鳥は効率的に長距離を飛行するため、上昇流を捕まえて高度を上げる。留鳥でも中型~大型の鳥類は、上昇流に群れる傾向がある。そのため上昇流が発生しやすい場所は、鳥類と風車が共存しにくいエリアと言える。数値シミュレーションを用いて上昇流の発生頻度等を把握でき、簡易的なリスクマップとして活用可能と期待される。
その他   再生可能エネルギー導入によるポジティブな効果 ゾーニング段階では風車による影響を整理する必要があり、ネガティブな議論ばかりが先行してしまう可能性がある。一方で、洋上発電事業には、地域経済に与える好影響や雇用等に与える効果なども期待されており、このようなポジティブな議論も含めて検討することが求められる。

 

7.本ゾーニングについて

(1)本ゾーニング評価については、今後、鳴門市が再エネ導入を検討する上で参考とする、重要見解として位置付けるものとなります。そのため、市内で事業を計画する者に対しても、その評価内容を、尊重することを求めます。

 

(2)本ゾーニング評価、ならびに掲載の関連資料については、個別の事業の成否を保証・担保するものでないことに注意してください。

 

(3)本ゾーニング評価は、上記検討期間において評価を行ったものです。そのため、今後の周辺環境の変化や、地域の開発に対する見解が変わる場合には、この評価内容が必ずしも適用できないことに注意して下さい。

お問い合わせ

環境共生部 環境政策課
TEL:088-683-7571