○鳴門市うずっ子条例
令和5年3月14日
条例第15号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 地域社会の役割と責務(第4条―第8条)
第3章 施策の方向性(第9条―第17条)
第4章 施策の推進(第18条―第21条)
第5章 雑則(第22条)
附則
子どもは、私たちの希望であり、一人ひとりが未来を担うかけがえのない存在であり、人種、国籍、性、出身、考え方、心身の障がい等にかかわらず、あらゆる差別や暴力を受けることなく、また、自己肯定感や自尊感情を損なうことなく、生まれながらにして持っている健やかに成長し、幸せに生きる権利が最大限尊重されなくてはなりません。
また、子どもは住む場所や食べ物があり、命が守られ、学び、遊び、持って生まれた能力を十分に伸ばし、暴力、搾取、有害な労働等から守られ、自由に意見を表し、様々な活動に参加する権利を持ちます。
私たちは、子どもが生まれる前から大人になるまで誰一人取り残すことなく、いじめ、虐待、貧困等の困難な状況で苦しんでいる子どもがいない社会の実現のため、子どもが声を出せるよう耳を傾け、寄り添い、意見を尊重し、子どもの最善の利益を第一に考えます。
そして、子どもの保護者が孤独や不安を感じることなく、子どもにとって最善の子育てができるよう、私たちは、お互いに協力し、それぞれの役割で子育てを支援します。
未来に残したい、渦潮を始めとする豊かな自然やドイツ兵捕虜との友愛の歴史、四国遍路のお接待の伝統がある鳴門市で、すべての子どもがいつも笑顔でいられるよう、そして、すべての保護者が子育てを楽しみ、子どもたちの未来のために、まちぐるみでお互いに助け合えるよう、この条例を制定します。
第1章 総則
(条例の目的)
第1条 この条例は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、鳴門市に関係する個人及び団体が地域社会全体で協力し、それぞれの役割と責任を果たすことにより子どもの権利を保障し、子どもの成長と子育てを支援することで、子どもに関する諸問題が解消され、子どもの最善の利益と心安らぐ安定した生活が守られ、子どもの意見が尊重される社会と環境の実現に寄与することを目的とします。
(1) 子ども 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者をいいます。
(2) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に監護し、又は養育する者をいいます。
(3) 地域住民等 子どもが育つ地域に居住し、通勤し、又は通学する者をいいます。
(4) 育ち学ぶ施設 保育所、幼稚園、認定こども園、小学校、中学校、高等学校その他子どもが育ち、学ぶことを目的として通所し、通学し、又は入所する施設をいいます。
(5) 事業者等 市内において事業活動を行う個人及び法人その他の団体をいいます。
(6) 大人 子ども以外の者をいいます。
(基本理念)
第3条 子ども及び子育て家庭への支援は、次に掲げる事項を基本理念として、地域社会全体で推進するものとします。
(1) すべての子どもが置かれている環境等にかかわらず、差別的な扱いを受けることがなく、安全・安心に生きていくことができるよう、子どもの基本的人権が尊重され、その権利が擁護されること。
(2) すべての子どもが自らを大切に思う気持ちと他者を大切に思う心を育み、一人ひとりの個性を尊重しながら、自己肯定感とたくましく生きる力を身に付けることができるよう支援されること。
(3) すべての子どもが発達段階に応じた学びや遊びを通じて、豊かな人間関係を育み、主体的に社会に参加することができるよう環境が整備されること。
(4) 保護者が家庭や子育てに夢を持ち、子育ての喜びを実感できるよう支援されること。
(5) 市、保護者、地域住民等、育ち学ぶ施設及び事業者等は、現在から将来にわたって子どもが幸せに生活できる社会の実現のため、それぞれの責務や役割を果たすとともに、互いに連携し、地域社会全体で施策に取り組むこと。
第2章 地域社会の役割と責務
(市の役割と責務)
第4条 市は、子どもを地域社会全体で健やかに育むため、国、他の地方公共団体その他の関係機関等と連携し、子どもが生まれる前から大人になるまで、子どもの最善の利益が守られるよう、年齢や発達段階に応じた支援施策を切れ目なく、総合的かつ一体的に実施するものとします。
2 市は、保護者、地域住民等、育ち学ぶ施設の関係者及び事業者等が互いに情報を共有し、協力しながらそれぞれの役割を果たすことができるよう、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、必要な支援及び調整を行うものとします。
(保護者の役割)
第5条 保護者は、子育てにおける第一義的責任があることを認識し、子どもの最善の利益を考えるとともに、子どもの人格を尊重し、子どもの成長や発達に応じた養育に努めるものとします。
2 保護者は、子どもが豊かな人間性や基本的な生活習慣を身に付けて成長することができるよう、必要な協力を周囲から得るとともに、より良い家庭環境づくりに努めるものとします。
(地域住民等の役割)
第6条 地域住民等は、日常生活において子どもを見守り、安全・安心に子どもが生活し、保護者や家庭が子育てをすることができる地域の環境づくりに努めるものとします。
2 地域住民等は、子どもの成長に関して、子どもと保護者に向けた情報及び知識の共有並びに交流及び相談等の支援に努めるものとします。
3 地域住民等は、保護者及び育ち学ぶ施設を支えるとともに、市及び地域団体(地域住民等で成り立っている団体等をいいます。)が行う子ども・子育て支援の取組に協力するよう努めるものとします。
(育ち学ぶ施設の役割)
第7条 育ち学ぶ施設の関係者は、子どもの最善の利益が守られ、子どもの年齢及び心身の発達に応じて、子どもが主体的に育ち、学ぶことができ、それにより能力や可能性を最大限に伸ばすことができるよう、必要な支援を行うこととします。
2 育ち学ぶ施設の関係者は、子どもが自分と他人が持つ権利を理解し、尊重し、守ることを身に付けられるよう、支援に努めるものとします。
(事業者等の役割)
第8条 事業者等は、子育てにおける保護者の役割を理解し、保護者が仕事と子育てを両立できる職場環境の整備に努めるものとします。
2 事業者等は、地域社会の一員として、地域で行われる子どもの健やかな成長のための取組に協力するとともに、将来の地域を担う人材の育成に努めるものとします。
第3章 施策の方向性
(子ども及び子育てへの支援)
第9条 市は、性別、国籍、障がい等にかかわらず、すべての子どもとその保護者に対して、それぞれの環境や状況に応じ、安心して子育てをすることができるよう、必要な施策を講ずるものとします。
2 市は、子どもが生まれてから大人になるまで、切れ目のない継続した支援の施策を講ずるものとします。
3 市は、妊娠前から出産前まで、子どもの母親とその配偶者又はパートナー及び家族等周囲の人が安心して出産を迎えることができる環境を整えられるよう支援するものとします。
4 市は、小学校教育との円滑な接続を図るため、担当部局一元化等の幼保一元化をはじめ、一体的な就学前教育及び保育を推進し、幼児期からの質の高い教育及び保育が提供できるよう、必要な施策を講ずるものとします。
(特別な支援が必要な子どもへの支援)
第10条 市は、視覚障がい、聴覚障がい、知的障がい、肢体不自由、病弱、その他の理由により特別な支援が必要な子どもが合理的な配慮を受け、健やかに育ち、学ぶことができるよう、それぞれの状況に応じて、必要な施策を講ずるものとします。
2 市は、特別な支援が必要な子どもが、就学前からその障がい等を早期に発見し、早期からその発達に応じた必要な支援を受けられるよう、必要な施策を講ずるものとします。
(支援が必要な家庭の子どもへの支援)
第11条 市は、すべての子どもが家庭環境により、自己肯定感や自尊感情等を損なうことなく健やかに育ち学ぶことができるよう、適切な養育環境が保障されるための必要な施策を講ずるものとします。
2 市は、すべての子どもが本来大人が担うと想定される家事や家族の世話等により、学びや遊び等の子どもが持つべき時間や経験が奪われることがないよう、必要な施策を講ずるものとします。
(虐待の予防等に関する取組)
第12条 市は、地域住民等、育ち学ぶ施設の関係者及び事業者等と連携し、児童虐待の未然防止及び早期発見のために必要な施策を講ずるものとします。
2 市は、児童虐待を受けている子ども又はその疑いがある子どもに対して、一人ひとりに寄り添った迅速な対応を行うとともに、安全・安心の確保のために児童相談所、警察その他関係機関等との連携を強化するよう努めるものとします。
(不登校及びひきこもりへの対応)
第13条 市は、保護者、地域住民等、育ち学ぶ施設の関係者及び事業者等と連携し、不登校及びひきこもりに関する課題の解決のために必要な施策を講ずるものとします。
(子どもの居場所の確保)
第14条 市は、家庭又は育ち学ぶ施設以外に、子どもが自分らしく遊び、休息し、集い、安心して人間関係を作り合うことができる場の確保及び充実に努めるものとします。
(いじめ及び体罰の防止等に関する取組)
第15条 市は、保護者、地域住民等、育ち学ぶ施設の関係機関及び事業者等と連携し、いじめ及び体罰から子どもを守るために必要な施策を講ずるものとします。
(相談体制の強化)
第16条 市は、子どもが困りごとを安心して相談できるよう、関係機関等と有機的に連携し、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、相談体制の強化に努めるものとします。
2 市は、保護者及び地域住民等からの子ども及び子育てに関する相談について、関係機関等と有機的に連携し、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、相談体制の強化に努めるものとします。
3 市は、保護者の離婚その他家庭の環境が大きく変わる場合において、子どもの利益ができる限り優先されるようその家庭の状況を把握し、特に配慮して相談に応じるよう努めるものとします。
4 市は、子どもの困りごとの相談に関する窓口等の情報の周知に努めるものとします。
(大学等との連携)
第17条 市は、大学及び研究機関等と連携することにより、教育及び保育の充実・向上を図る取組を推進します。
2 市は、大学及び研究機関等から研究活動又は人的資源等の協力を得て、子ども及び子育てに関する課題解決に取り組みます。
第4章 施策の推進
(子どもの参加)
第18条 市は、子どもが社会の一員として自分の意見を表明し、社会に参加する機会及び仕組みを設けるなど、子どもが意見を言いやすい環境を整備するものとし、身近な大人や仲間が代弁できる機会を設けるよう努めるものとします。
2 市は、子どもの意見表明及び社会参加を促進するため、子どもの意見を尊重し、主体的な活動を支援するものとします。
3 市は、子どもが地域社会の中で健やかに育つことができるよう、子どもと地域住民等との交流を促進するとともに、地域の行事等に参加する機会並びに地域の歴史、文化、伝統及び自然に触れ親しむ機会の充実に努めるものとします。
(計画の推進)
第19条 市は、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第61条の規定により定める「鳴門市子ども・子育て支援事業計画」の着実な推進を図るとともに、この条例と教育基本法(昭和22年法律第25号)第17条第2項の規定により定める「鳴門市教育振興計画」、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第33条の20の規定により定める「鳴門市障がい児福祉計画」その他の法律及び条例の規定により定める計画等とを相互に関連させ、総合的に子どもに関する施策の推進を図るものとします。
2 市は、子ども及び子育てに関する計画等を制定し、又は改正するとき並びに施策を実施するときは、この条例の内容を適宜確認するものとします。
(推進体制等)
第20条 市は、子ども及び子育て家庭への支援施策を切れ目なく実施するために、推進体制を整備するとともに、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとします。
(広報及び啓発)
第21条 市は、この条例について、子ども、保護者、育ち学ぶ施設の関係者、地域住民等及び事業者等の理解が深まるよう、広報及び啓発を行うものとします。
2 市、保護者、育ち学ぶ施設の関係者、地域住民等及び事業者等は、自らが行う子ども・子育て支援に関する取組について、子どもの視点及び年齢に応じた分かりやすい情報発信に努めるものとします。
第5章 雑則
(委任)
第22条 この条例に定めるもののほか、施行に必要な事項は市長が別に定めます。
附則
この条例は、令和5年4月1日から施行します。